母語と第二言語

ある人の言葉づかいが、何かのきっかけで変わることがあります。

例えば地方から東京に引っ越してきた人が東京の言葉を使いだすとか、ギャングスタ・ラップ好きの人と付き合っていたら、自然にラップっぽい言葉づかいになるとか。ひとは、社会が求める役割を演じるために、年齢相応の言葉づかいをし始めるものらしいですが、ここではそういう変化とは別のことを取り上げます。

アメリカに住んで4、5年目で日本に一時帰国したことがあります。高校や大学のときの友人に会うたび、「あなた、変わったよね」とか「アメリカナイズされた」と言われました。

着ている服も好きな食べ物も、日本にいるころとほぼ変わっていないのに、「アメリカナイズされた」とは何のこと?アメリカに戻り、知り合いの日本人にこの疑問をぶつけると、

「英語のコミュニケーションスタイルが体に沁み込んだってことだと思うよ」と。英語が日本語の使い方というより、考え方そのものに影響を及ぼすことを知りました。

母語(私の場合は日本語)が第二言語(英語)に影響を与えるのは、発音のしかたや英語で書く文章の向こうに日本語が透けて見えるなど、「母語干渉」があるのですぐ分かります。一方、英語の学習が、母語(日本語)に影響を与えるのだそうです。

英語を使える人が日本語で話すとき、英語的な思考回路の影響があるため、「私は」と主語を落とさず話すようになっているのかもしれません。そのため「アメリカナイズされた」日本語に聞こえるのでしょう。(続く) 

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